カナダ・アメリカ・中国による息を呑む心理戦

アメリカを読む】米・カナダ暗闘から浮かぶトランプ政権の〝原理主義

https://www.sankei.com/smp/world/news/181210/wor1812100014-s1.html

20カ国・地域(G20)首脳会議の舞台となったブエノスアイレスで、トランプ米政権はカナダ、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新協定の調印式を開いた。式典は3カ国首脳が参加して華々しく行われたが、その舞台裏では、関税を振りかざす米政権と、その取り下げを要求するカナダが暗闘を展開。カナダのトルドー首相が参加を確約せず、3首脳が居並ぶ調印式の成立が危ぶまれる事態となっていた。(ワシントン支局 塩原永久)

G20が開催されたアルゼンチンの首都ブエノスアイレス市。G20初日の11月30日、同市内の高級ホテルでNAFTAを改定した新協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の調印式が開催。トランプ米大統領はトルドー氏、メキシコのペニャニエト大統領とひな壇に上り、「米国がこれまでに結んだ最大の合意だ」と自賛した。
 トランプ氏は雇用の国外流出を招いたとしてNAFTAの再交渉に乗り出し、9月末までに相次いでメキシコ、カナダとUSMCAの合意にこぎ着けた。USMCAを成果として誇るトランプ氏にとり、調印式をG20首脳が集まる場で開くことは、貿易問題をめぐり自国利益を貫く姿勢をみせつける機会になる。
協定文書に署名したトランプ氏はトルドー氏とペニャニエト氏と堅く握手し、満足げな表情を浮かべた。

 だが、3カ国トップが顔をそろえる式典に向け、米国とカナダは直前まで薄氷の調整を続けたようだ。トルドー氏が式典参加の約束を拒んだためだ。
 カナダ紙グローブ・アンド・メールによると、カナダ首相府がトルドー氏の参加を公表したのは前日の29日。それまでは式典参加者がフリーランド外相になるとしていた。フリーランド氏はUSMCAの交渉を担当したとはいえ、あきらかに首相から格が下がる。
 トルドー氏は署名を拒む考えも示していたといわれるが、その最大の理由は、トランプ政権がカナダも対象として発動している鉄鋼とアルミニウムに対する輸入制限だ。
 米国は3月に鉄鋼・アルミの輸入品へ25%の関税を上乗せする措置を発動し、貿易協議が停滞していたカナダに圧力をかけるため、6月から同国にも関税を適用。米国への鉄鋼の主要輸出国であるカナダ政府は強く反発していた。

 カナダ政府は、米国が求めた内容を盛り込んだUSMCAの合意により、カナダを鉄鋼輸入制限の適用外とするのが当然だとの立場だった。ところが、USMCA合意後もトランプ政権は、カナダやメキシコへの関税適用を継続。カナダは米国と断続的に協議を重ねてきたが、結局、調印式まで妥結できなかった。
 トルドー氏は調印式でのスピーチで、トランプ氏に「ドナルド」と名前で呼びかけ、「鉄鋼・アルミ関税の取り下げに向けて、われわれはまだやるべき仕事が残っている」とクギを刺すのを忘れなかった。
 USMCAの発効には3カ国すべての議会での承認手続き(批准)が必要になる。米国の専門家は、発効が2019年後半以降にずれ込むとの見方を示す。

 一方、調印式を控えて米国とカナダが繰り広げた暗闘から浮かび上がるのは、関税を振りかざした交渉戦略に強くこだわるトランプ政権の姿勢だ。
 同紙によると、米国は鉄鋼輸入制限をめぐるメキシコとの交渉で、鉄鋼の輸入割当(クオータ)を要求。メキシコの対米輸出実績の80%を上限とする内容で、メキシコ政府は断ったという。そのため米政府はメキシコに対する関税適用を継続しているもようだ。
 USMCAで米国は、カナダ、メキシコそれぞれに自動車の輸入割当を飲ませるサイドレター(付帯文書)を結んだ。両国とも年間の対米輸出台数の上限を260万台に設定した。カナダとメキシコからの対米輸出は、それを上回らない限り、米国が検討中の自動車と関連部品に対する関税措置が適用されない仕組みとされる。

 トランプ政権の狙いは、高関税に輸入割当を組み合わせ、国内の鉄鋼や自動車といった重点産業を保護することだ。同紙によると、トランプ政権は大統領が強いこだわりをみせる自動車に関して、メーカーごとに輸出台数を割り当てるクオータにも関心を示しているとされる。
 トランプ政権はUSMCAを、今後、新たに結ぶ貿易協定の「ひな型」と位置づけている。カナダとの交渉経緯をみると、米政権は「関税+輸出割当の原則論」を貫く構えのようだ。年明け以降に米国と物品貿易協定(TAG)の締結交渉に乗り出す日本にとっても他人事ではない。自由貿易を推進する立場からは、トランプ政権が打ち出す自国産業保護の「原理主義」を打ち崩す対抗策が求められる。





【感想】

カナダのトルドー氏には、アメリカに対するわだかまりがあり、調印式前日に参加を表明した。トランプ大統領の周りには、トルドー、メルケルマクロンなど悩ましい首脳が多数おり、相対的に安倍首相はまだマシとみなされている。そのため、日中首脳会談の内容に対して、トランプ政権は強く反発しなかったが、決して日本の対中協調路線を容認した訳ではない。ところで、G20では、アメリカとカナダの間に気まずい空気が流れたが、ディールの達人トランプ大統領は、数日後に、カナダに依頼して、ファーウェイ幹部を逮捕した。不意を突かれた習近平は、カナダの元外交官を報復逮捕した。神出鬼没のトランプ外交に習近平は振り回されている。幹部逮捕の当日に、中国人の天才物理学者が自殺し、陰謀論の噂さえ出ている。





by ロード




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