トランプ政権、中国をデカップリング

アメリカを読む】中国の「切り離し」に向かうトランプ政権

https://www.sankei.com/smp/premium/news/190530/prm1905300003-s1.html

トランプ米政権が矢継ぎ早に、中国に対する制裁関税の強化や、中国ハイテク企業の封じ込め策に踏み切った。5月上旬に貿易協議が決裂したことで、米政権が中国を国際経済から切り離す「デカップリング(分離)」に本格的に動き出したのだ。世界経済が米中2陣営に分離される「経済冷戦」時代の到来が現実味を帯びてきた。
(ワシントン支局 塩原永久)

 「世界経済に『鉄のカーテン』が出現する。主戦場はハイテクだ」

 米中経済関係のキーマン、ポールソン元米財務長官は5月上旬、米テレビ番組でそう語り、米ソ冷戦の時代に世界の分断を象徴する概念として人口に膾炙した「鉄のカーテン」が、米中間に築かれると予言した。

昨年12月の米中首脳会談後、中国による知的財産の保護策や、外国企業に技術移転を強要する政策の是正を話し合う貿易協議が本格化した。米中両政府の会合は11回を数え、合意は間近とみられていたが、トランプ米大統領が5月5日、対中制裁関税の強化を突然、ツイッターで発表。中国からの輸入品2000億ドル(約22兆円)分に課した追加関税の税率を10%から25%に引き上げ、さらに3000億ドル分に課税する準備もはじめた。

米政府は「中国が約束済みの合意をほごにし、再交渉しようとした」(閣僚)ための措置だと説明している。米メディアによると、トランプ氏による5日のツイッター発言の直前、中国が米政府に合意文書の草案を送付。草案は合意の重要部分が「ほとんど削除されていた」として、中国の改革姿勢の後退が「米大統領の怒りを買った」と伝えている。

 中国政府の“変心”が対立激化の引き金になったとの見方だ。ただ、米通商専門メディアによると、米通商代表部(USTR)はすでに前週、2000億ドル分の関税引き上げに備え、関税適用の除外品を選定する準備を始動していた。トランプ氏が「怒りの鉄槌(てっつい)を振り降ろすシナリオ」は、周到に用意されていた可能性がある。

中国は「主権」にかかわる部分で一貫して対米譲歩を拒否していたとみられ、結局のところ、11回の貿易協議は、自由主義経済と相いれない中国の姿を浮かび上がらせた格好になった。

■発言力増す「デカップリング派」

 「水と油」のような米中経済の実態が、トランプ政権内で改めて認識されていく中、ロス商務長官やナバロ大統領補佐官(通商問題担当)の発言力が強まっているとみられる。

 米外交問題評議会(CFR)のオールデン氏は、中国を戦略的脅威と位置づけるナバロ氏や、政権外に出た元大統領首席戦略官兼上級顧問のバノン氏を念頭に、「デカップリング推進派の意見をトランプ大統領が聞き入れた」との見方を示す。

その結果、米政府は5月中旬、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)に対する禁輸措置を断行。米国内で中国製品を締め出す大統領令にも踏み切った。

 このところトランプ氏は「企業は中国から(制裁関税の)非課税国に移転すればいい。米国で製造するのが最善だ」という趣旨の発言を繰り返している。米制裁関税で打撃を受ける中国進出企業に“中国脱出”を促しており、制裁関税の長期化を辞さない構えだ。製造業のサプライチェーン(部品の供給・調達網)に組み込まれ、「世界の工場」として発展した中国。米政府は、その時計の針を逆に戻し、デカップリングを推し進める姿勢を鮮明にしている。

■関税の効果を重視

 トランプ政権はこれまでの貿易交渉で、追加関税を「交渉カード」として駆使してきた。だがトランプ氏の発言からは、米中間の貿易に打撃を及ぼす関税の効果そのものを重視する認識がにじみ出ている。

 米ピーターソン国際経済研究所のポーゼン所長は米ブルームバーグ通信に「トランプ氏は株式市場や(農産品の対中輸出が多い)アイオワ州の支持率がどうなるかで(強硬な通商政策を)思いとどまることはなくなった」と語った。

以前は、株価急落や、大統領選挙で重要な中西部の農業州での支持率低下への危惧から、大統領が「いずれ中国と合意を取りまとめる」との観測があった。だが今では、トランプ氏は「保護主義的な通商政策が米国にとって正しいという信念」(ポーゼン氏)に従って、中国との対決路線を貫くとの見方が強まっている。








【感想】

トランプ政権が中国の経済的分断を徹底的に押し進めるという上記記事の分析は正しいと思う。もし、米国の農家のデメリットやトランプ政権に対する支持率への影響があっても、全輸入品への関税25%は緩めず、習近平が白旗を掲げて、大きなディールを求めてくるまで締め付けは続けられると見る。そして、白旗を揚げる前にチャイナショックとなるかもしれない。リコーは損切りを決断して中国離脱に踏み切った。パナソニックはファーウェイ排除に舵を切った。それに対し、トヨタ経営判断が甘く、中国との取り引き継続を明言しており、アメリカから制裁される可能性すらある。経団連親中派議員は状況判断を見誤っている。米中は砲火を交えていないだけで、既に戦争状態なのだから、日本の対中戦略はトランプ政権と共同歩調を取るべきである。





by ロード




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