訪中の総括と一抹の不安

安倍首相が習近平主席と会談、日中新時代へ「競争から協調へ」など新3原則確認 李首相には「人権状況注視」言及

https://www.sankei.com/smp/politics/news/181026/plt1810260033-s1.html?cx_fixedtopics=false&cx_wid=56c5c8fd4862f07641d68d2fa608d149e21378c8

【北京=原川貴郎】中国を公式訪問中の安倍晋三首相は26日、習近平国家主席北京市の釣魚台国賓館で会談し、新たな日中関係の構築に向け「競争から協調へ」「脅威ではなくパートナー」「自由で公正な貿易体制の発展」とする3つの新たな原則を確認した。安倍首相はこれに先立つ李克強首相との会談で、ウイグル族への弾圧などを念頭に「中国国内の人権状況について日本を含む国際社会が注視している」と述べた。

 安倍首相は習氏に「私の訪問を契機に競争から協調へ日中関係を新しい時代へと押し上げていきたい。日中はパートナーであり、互いに脅威とはならない。自由で公正な貿易体制を発展、進化させていかなければならない」と述べた。習氏は「中日関係が長期にわたり健全かつ安定的に発展することは両国人民の根本的利益になる」と応じた。

李氏との会談では、今後5年間で3万人規模の青少年の相互訪問や交流を実施することで一致し、日本側は訪日中国人に対するビザ発給要件の緩和を決めた。両首相は共同記者発表で、金融危機時に互いの通貨を融通し合う通貨スワップ(交換)協定を中央銀行間で締結したことも明らかにした。上限額は平成25年に失効した旧協定の10倍の約3兆4千億円規模とする。

 中国側は東京電力福島第1原発事故後から続く日本産食品に対する輸入規制の緩和について、科学的な評価に基づき積極的に考えると表明した。両国の周辺海域での救難時の協力の円滑化・効率化を図る海上捜索・救助(SAR)協定の締結にも合意。6月に運用開始した防衛当局者間の海空連絡メカニズムに関し、年内の会合開催やホットラインの早期設置も確認した。

 東シナ海での資源開発をめぐっては「交渉の早期再開を目指して意思疎通を強化する」ことで一致するにとどまった。




【感想】

安倍首相の訪中は、米中対決、真っ只中での首脳会談なので、トランプ大統領と歩調を合わせ毅然たる姿勢を期待したが、安倍首相はマイルド路線を選択した。ODAと通貨スワップをバーターさせ、尖閣を念頭に東シナ海の安定に言及し、ウイグルを始め人権問題への注視を伝え、一帯一路を想定した第三国でのインフラ開発協力を約束し、経済界に配慮した刺激の弱い表現を多用した。一方、苦境に立つ中国は、李克強に重要な交渉を任せ、もし成果が出なくとも責任が習近平に及ばないように保険をかけた。中国は安倍首相の背後にトランプ大統領の影を感じ、世界中の視線を意識して、苦境を脱するため、何とか日本を利用しようと考えた。今回の訪中を総括すると、日本がアメリカ陣営であると明確に伝えられなかったことで、保守系支持層には、物足りなさを残し、中国・アメリカ・国際社会には、誤ったメッセージを送ってしまったと言う一抹の不安が生じた。そして、最も注目された通貨スワップは、これから資本取引自由化の呼び水となって、共産党体制崩壊の引き金となることを期待したい。




by ロード



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