優勢なアメリカ陣営と劣勢の中国陣営

アメリカを読む】ファーウェイ事件、カナダのジレンマ

https://www.sankei.com/smp/premium/news/181218/prm1812180006-s1.html

中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟(もう・ばんしゅう)容疑者がカナダで逮捕された事件は、中国、米国、カナダの3カ国を巻き込んだ国際問題に発展している。先端技術の覇権争いをめぐり激しく対立する米国と中国。その間で板挟みとなっているのがカナダだ。事態は中国当局によるカナダ人拘束という“人質外交”にまで発展し、カナダ政府の対応が注目されている。(ニューヨーク支局 上塚真由)

米中首脳会談の陰で…

 世界170カ国・地域で事業を展開する中国を代表するファーウェイ。その創業者の娘で、後継者とも目される孟容疑者の逮捕のニュぬぬゆめくぬそは、世界中をかけめぐった。
 12月1日。孟容疑者は香港からメキシコに向かう途中、乗り継ぎでカナダ・バンクーバーの空港を訪れた際に逮捕された。
 米当局は、孟容疑者が関連会社を通じた取引で対イラン経済制裁に違反した不法行為をめぐり、8月22日に逮捕状を発行。逮捕の機会をうかがっていたが、捜査を察知していたとされる孟容疑者は昨年春ごろから渡米を控えていた。そんな中、11月30日に孟容疑者がバンクーバーに向かうことが分かり、犯罪人引き渡し条約に基づいてカナダ司法当局に身柄の拘束を要請したという。

12月1日にはアルゼンチンのブエノスアイレスで、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が約1年ぶりに会談。両国の貿易戦争を「一時休戦」することで一致した直後の逮捕劇だった。米メディアは、トランプ大統領が米当局によるカナダへの身柄拘束要請を知らなかったと報じ、カナダのトルドー首相は拘束の「数日前」には報告を受けていたと明らかにした。
 5日にカナダメディアが報じて孟容疑者の逮捕が明らかになると、中国政府は即時釈放するようカナダに抗議。10日には中国国家安全省が元外交官のマイケル・コブリグ氏と企業家のマイケル・スパバ氏の2人のカナダ人を拘束した。

カナダの苦悩

 米国の要請に基づいて司法手続きを進めた結果、自国民が拘束されるという事態にまで追い込まれたカナダの苦悩は深い。
 ファーウェイ事件をめぐりトルドー政権は「法の支配」に従うとし、孟容疑者の米国移送に関する審理や手続きは司法の判断に委ねるとの見解を繰り返す。一方、相次ぐカナダ人拘束には「深刻に懸念」「中国側に説明を求めている」と述べるのみで、解放要求など中国への強い対応には踏み込まず、カナダ国内でも批判の声が噴出している。
 野党・保守党のシアー党首は13日、カナダ人の拘束について「トルドー政権の未熟な対中政策が機能していないことを示した」と指摘し、中国政府に対し「はっきりと非難する」ことを求めた。
 カナダは地政学上、米国と最も緊密な同盟国である一方、経済発展が著しい中国との関係強化にも近年、力を入れてきた。トルドー氏は対中貿易の拡大に意欲を示しており、11月には、自由貿易協定(FTA)の締結に向けた協議再開で中国側と合意。中国への接近は、トランプ米政権の通商政策への警戒がある。北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を通じ、対米貿易が7割~8割を占めるという「米国依存」からの脱却をはかる必要性に迫られたためだ。

 だが、孟容疑者の逮捕を受け、すでにさまざまな影響が出ている。高級ダウンジャケットで知られるカナダブランド「カナダグース」の株価は急落。13日の終値が4日時点から約20%下がり、中国で不買運動が起こると不安視されたことが要因とみられる。15日に予定されていた北京市内の中国本土1号店のオープンも延期された。
 12月半ばにはカナダと中国の観光関係の式典が中国で予定されていたが、カナダメディアによると、カナダ政府は14日、式典の開催が延期されたと明らかにし、参加予定だったジョリー観光相は中国訪問を取りやめた。

米への引き渡しは?

 カナダ・バンクーバーの裁判所は11日、バンクーバーにとどまることなどの条件付きで孟容疑者の保釈を認めた。現地からの報道によると、現在はバンクーバーに所有する豪邸で過ごしており、待機する報道陣にピザを注文する場面もあったという。
 カナダ国内では、米国の要請に基づいて孟容疑者の逮捕をした判断に意見は二分し、「法に則り、粛々と判断すべきだ」とする肯定派のほか、否定派も少なくない。地元紙グローブ・アンド・メール紙に寄稿したブリティッシュコロンビア大のマイケル・ベイズ教授(国際法)は、今後の対中関係への影響を考慮し、「トルドー氏は事前に孟容疑者に対し(カナダに渡らないよう)知らせることが賢明だった」と主張する。

 引き渡し手続きをめぐる審理日程を決めるため、孟容疑者は来年2月6日に出廷する。過去には大半のケースで米国への引き渡しを認めてきているが、判決に対し、上訴することが可能で裁判の長期化も予想される。中国は、孟容疑者の帰国に向けて圧力を強めるとみられ、カナダの苦しい立場が続く。






【感想】

ファーウェイの孟晩舟容疑者も日産のゴーン容疑者と同様に個人犯罪ではなく、企業ぐるみを超えて世界規模の事件である。アメリカには国防権限法があり、ファーウェイ排除は今年8月に決定していた。米政府は、司法取引により中国政府の不正介入の証拠を押さえたいが、カナダの自宅で保釈中の孟容疑者を米国に移送できるか微妙である。ファーウェイ排除は、経済的な5G覇権争いではなく、より重要度の高い安全保障上の問題となっている。5G規格で、安全なアメリカ陣営に入るか、情報漏洩の懸念のある中国陣営に入るか、世界各国は旗色を鮮明にすることを迫られている。中国の法律によると、ファーウェイやZTEは、中国政府や人民解放軍からの要請があれば、盗聴や情報提供をする義務がある。日本が民間企業も含めてアメリカ陣営に入ることは当然のことである。現在、アメリカ陣営には、日本・イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・ドイツ・フランス・ロシア・インドなどが参加表明しており、中国陣営は追い詰められている。




by ロード



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