メルケル訪日による対中外交の分岐点

メルケル氏の日本接近、背景に対中観変化と安倍長期政権


https://www.sankei.com/smp/politics/news/190204/plt1902040034-s1.html

ドイツ首相を13年以上も務め、今回5度目の来日となったメルケル氏は、中国へは10回以上も訪問し、中国重視の立場で知られてきた。近年はドイツで相次ぐ中国企業による企業買収に対する警戒感の高まりを背景に、対中姿勢にも変化が生じている。安倍晋三首相はこうしたタイミングでの来日をとらえ、「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向け、対英仏などに比べ「半周遅れ」(外務省幹部)の日独間の安全保障関係強化に重点的に取り組んだ。(原川貴郎)

メルケル氏のかつての対日観を示すエピソードがある。平成27年3月、北海道洞爺湖サミット以来、約7年ぶりに来日したときのことだ。
 安倍首相「中国には何度も行っているのに、日本にはずっと来なかったのはどうしてか」
 メルケル氏「日本の首相は毎年代わるから会っても仕方がないと思った」
 当時、中国国家主席の任期は2期10年務めるのが既定路線だった。一方、安倍首相の再登板まで日本の首相は7年連続で毎年交代していた。

だが、在任が丸6年を超えた安倍首相は今や主要7カ国(G7)のリーダーでメルケル氏に次ぐ2番目の古参で、「トランプ米大統領が世界の首脳の中で唯一、意見に耳を傾けるのが安倍首相」(外務省幹部)とされる。トランプ政権が課した鉄鋼製品などへの高関税に反発するメルケル氏が、トランプ氏との仲介役ができる安倍首相との関係を重視しているのは間違いない。

 ドイツでは世界有数の産業ロボット製造会社クーカが中国家電大手に買収されるなど、ハイテク、インフラ企業の中国企業による買収が急増している。安全保障に関わる技術の流出も懸念され、ドイツは欧州連合(EU)加盟国以外からの国内企業への投資に対する規制を強化している。

外務省幹部によれば、こうした流れの中、ドイツも東シナ海南シナ海での中国の「一方的な現状変更の試み」を批判する日本の立場に理解を示し、インド太平洋地域への関与に関心を強めているという。

 安倍首相はメルケル氏との会談で、自由貿易推進の重要性を確認し、欧州主要国の中で日独間にだけなかった情報保護協定の締結に大筋合意した。4年前の来日時、講演などで歴史問題や脱原発を唱えたメルケル氏だが、状況は一変した。








【感想】

欧州で最も親中国家であったドイツが方向転換し、状況は一変した。ほんの数年前まで、中国は一帯一路で鼻息が荒く、その中核のドイツは自動車産業で中国市場の席巻を目論んで蜜月時代であった。ところが、半年前に、ドイツ銀行筆頭株主である中国の海航集団が経営悪化により保有する同行株全てを売却する計画が報道され風向きが変わった。ファーウェイ問題では、ドイツも排除を決めた。今後は、ハイテク覇権・諜報分野でも、ファイブアイズ・プラススリー陣営(アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド)+(日本・ドイツ・フランス)の結束が強化されて、中国陣営に対抗して行く。ただし、今回のメルケル訪日でドイツの方向性は変化したが、対決姿勢を鮮明にするトランプ政権との温度差はある。記事本文中にもあるように、短命政権では外交的に国益を損ねる。国政選挙5連勝の安定政権だからこそ安倍首相は国際社会から一目置かれる存在になり得た。アメリカでは、トランプ大統領共和党よりも、リベラルな民主党の方が対中強硬派となっており、自由民主主義陣営の対中国の結束力は徐々に強まってきた。





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