中東和平案 米「負けを認めよ」とパレスチナに迫る

中東和平案 米「負けを認めよ」とパレスチナに迫る

https://www.sankei.com/smp/world/news/200129/wor2001290020-s1.html

【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米大統領は28日発表した新中東和平案について、イスラエルパレスチナ自治政府に「ウィンウィン(双方に有益)となる機会を提供する」と強調した。和平案は、従来の国際合意にとらわれず、実質的に新規まき直しの交渉を提唱するものだ。

 トランプ氏はホワイトハウスで和平案に関し「パレスチナ国家の樹立がイスラエルに対する安全保障上のリスクとなる問題を解消した、現実的な2国家共存策だ」と強調した。

トランプ政権高官も記者団に対し、「パレスチナは当初は和平案に疑心を抱くだろうが、いずれ交渉入りに合意するだろう」と期待を表明した。

 トランプ氏の娘婿であるジャレド・クシュナー氏らが約3年間かけて作成した和平案は約80ページにわたり、2014年に和平協議が頓挫して以降の米政府の和平提案では最も詳細な内容であるのは間違いない。

 そして、国連安全保障理事会や国連総会、過去の中東和平合意を必ずしも踏襲せずに思い切った提案をしているのも特徴だ。

特に、イスラエルパレスチナ国家との境界線の線引きを大幅に変更したことは、2国家共存は「1967年の第3次中東戦争以前の境界線」を基準として進められるとした従来の国際合意から完全に逸脱するものだ。

 また、ガザ地区の南部に新たに一定規模の土地を提供し、開発を支援するとの提案には、不動産開発業者だったトランプ氏らしい発想が透けてみえる。

 和平案は、ヨルダン川西岸地区ユダヤ人入植地についてイスラエルの主権を認め、エルサレムイスラエルの首都と位置付けるなど、イスラエルに有利な内容なのは疑いない。

 しかし、パレスチナは経済および治安維持をイスラエルに大きく依存しており、双方の力関係を考えれば、例えば従来の境界線を基準とした2国家共存を双方が「対等」な立場で実現させるのは、現実問題として不可能に近い。

トランプ氏の和平案を突き詰めれば、パレスチナに「負け」を認め、「グッド・ルーザー(良き敗者)」としてイスラエルと共生していくことを勧めたものだといえる。









【感想】

イスラエル寄りの和平案とはいえ、今まで自治政府としか見なされなかったパレスチナを、武装組織ハマスの活動停止を条件として国家として認めている。そしてヨルダン川西岸地区の中のユダヤ人入植地は実質的にイスラエルの領土にするが、それ以外のヨルダン川西岸地区ガザ地区を地続きの領土にして、首都は東エルサレムとする。それからパレスチナ難民の帰還権は認められない。この様な和平案を受け入れるなら、5兆円の支援を約束している。一方、イスラエルの立場からは、首都はエルサレムとし歴史的な地域は一括管理することを始め、イスラエルの要望通りの和平案となっている。トランプ大統領による今回の中東和平案は、パレスチナを蚊帳の外に置き、イスラエルの右派と左派を仲介し、ネタニアフとガンツを納得させる和平案となっている。トランプ大統領としては、イスラエルに恩を売ることで、キリスト教福音派の支持基盤を固め、再選戦略の一歩としている。トランプ流の2国家共存策の記者会見にパレスチナ側が欠席していることでパレスチナの立ち位置が理解できる。和平交渉ではなく、最終的な解決策の最後通牒となっているが、もしパレスチナ側が受け入れれば、トランプ大統領パレスチナに明るい未来への道筋を提示し支援を約束している。平時なら、中東和平案やブレグジットの瞬間は歴史的なビッグニュースであるが、新型コロナウイルス肺炎の嵐がかき消してしまった。それがかえって「今」が歴史上特別な時であり、縦的に積み重なった歴史的課題を横的に一気に蕩減復帰する時代の真っ只中にいるように思える。





by ロード




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