プーチン大統領の足元を揺るがすウクライナ正教会独立問題

【環球異見・ウクライナ正教会“独立”へ】露経済紙「キエフ奪った」 トルコ紙「露の主張に打撃」

https://www.sankei.com/smp/world/news/181022/wor1810220011-s1.html

キリスト教の三大教派の一つ「東方正教会」の筆頭権威コンスタンチノープル総主教庁が、トルコのイスタンブールで開いた主教会議(シノド)で、ウクライナ正教会に対するロシア正教会の管轄権を認めない決定を下した。ロシアや中東では正教会の分裂に懸念を示す論調が広がる。一方で米国メディアは、プーチン大統領帝国主義的な動きにからめ、旧ソ連圏の他の正教会に“独立”の波が及ぶ可能性を論じている。

 「コンスタンチノープル総主教庁ロシア正教会との敵対・競争関係に突き当たるだろう。正教会全体が揺れている」

■コメルサント(ロシア)「モスクワからキエフ奪った」

 12日付の露有力経済紙「コメルサント」は、「コンスタンチノープルはモスクワからキエフウクライナの首都)を奪った」とする論評を掲載。正教会内に分裂が起きる可能性や、露正教会が管轄する他国の正教会でもウクライナと同様に独立機運が高まることを危惧した。

 露正教会は、正教会で最大の約7500万人の信徒数を背景に、コンスタンチノープル正教会内の主導権を競ってきた経緯がある。「正教の守護者」を自任するロシアと露正教会にとり、今回の決定は自らの影響力や求心力、権威の失墜に直結する。露正教会は強く反発し、コンスタンチノープルとの交流断絶を表明した。国民を統合する価値観として正教を重視してきたプーチン大統領にとっても、痛手となることは避けられない。

論評は、露正教会が1686年にウクライナ正教会を下部組織とする決定を行った歴史を紹介し、「コンスタンチノープルは、露正教会が歴史上、330年間も維持したウクライナ正教会の管轄権を否定する決定を下した」と批判した。

 その上で、「南オセチアアブハジアマケドニアモンテネグロなど、各地域の正教会でも独立承認を求める動きが出てくる恐れがある」と危機感を示している。

 また、15日付の露有力紙「独立新聞」も「ウクライナによる教会紛争は許されない」との論評を掲載した。コンスタンチノープルの決定を受け、露正教会ベラルーシの首都ミンスクで主教会議(シノド)を開いた意義を分析した。

 ミンスクでの主教会議は歴史上初だとし、「モスクワと露正教会にとって、ミンスクでの主教会議は、ベラルーシに自身の影響力がなお残っていることを示したいモスクワの願望の表れだ」と指摘している。(モスクワ 小野田雄一)

■ヒュリエト・デーリーニューズ(トルコ)「露の主張に打撃」

 東方正教会系のキリスト教徒コミュニティーは、少数派ながらトルコやシリア、エルサレムなど中東各地に点在する。

 中東のメディアは、イスタンブールでの主教会議(シノド)に先立ち、ウクライナ正教会の“独立問題”がもたらす正教会分裂の危機を懸念する論評がみられた。

 ただ、ウクライナ正教会の独立に反発する露正教会が、正教会全体の権威を代表するコンスタンチノープル総主教庁(トルコ・イスタンブール)との関係断絶を決めたことについては、外国の通信社電を引用するにとどめるケースが目立った。

 国境をまたぐ宗教に国際政治がからんだ複雑な問題の扱いに、神経を使っている様子がうかがわれる。

 トルコ英字紙ヒュリエト・デーリーニューズ(電子版)は8月、「ウクライナ正教会の露正教会からの独立が認められれば、ロシアが国境を超越した役割を持つとする(同国の)主張にとって打撃となる」と論じた。

 その上で、今後はマケドニア正教会なども独立に向けた動きを強める可能性を指摘。最大の信徒数を背景に影響力を保ってきたロシアの権威が、正教会分裂の流れの中で低下すると示唆している。

 また、トルコ紙サバハ(電子版)は9月10日付で、ウクライナのポロシェンコ大統領が露正教会からの独立を推進するのは、ウクライナで「民族的アイデンティティーを強固にするための重要な一歩」と受け止められていると分析した。ウクライナ側の強気な姿勢の背後には、国内世論の後押しがあるとの見方も示している。

 一方、イスラエル紙ハーレツ(電子版)は今年5月の段階で、ウクライナ正教会の独立の動きを、同国のロシアからの政治的独立に結びつけようとするポロシェンコ氏の手法は、「社会の緊張に燃え上がらせる危険な策」だとの指摘を紹介し、同氏の「ギャンブル」に警鐘を鳴らしていた。(大内清)

ニューヨーク・タイムズ(米国)「プーチン氏の『帝国の再生』に対抗」

 米国ではウクライナ正教会の独立を、ロシアのプーチン大統領による「帝国の再生」(ニューヨーク・タイムズ紙)に対抗する動きとして、国際政治の観点から論じている。米メディアは東方正教会にとって1054年の東西教会の分裂以来の「大シスマ(分裂)」と位置付け、旧ソ連圏の他の正教会に波及するかに注目している。

 同紙は10月8日付で「ロシアとウクライナの緊張で1054年以来最大のシスマに」と題する記事を掲載し、プーチン氏が「モスクワが東方正教の中心地であるという考えを復活させようと計略をめぐらせてきた」ことが原因との見方を示した。

 記事は、超大国の復興を目指すプーチン氏が近年、ロシアが「伝統的価値」のとりでであり、クレムリン帝政ロシアの伝統の継承者であると印象づけるために露正教会を後押ししてきたと指摘した。

 東方正教会の決定は、「帝国のつながりを決裂させる」ものであるとし、他の正教会も影響を受けて露正教会からの独立を目指すと予測している。このような動きは2014年のウクライナ南部クリミア半島併合や、同国東部紛争への介入といったプーチン政権の行動に対する反発によるものであり、ロシアに責任があると断じた。

 ニュースサイト「Vox」は17日に配信した記事で、プーチン氏がロシアを古代ローマコンスタンチノープル(第二のローマ)に次ぐ「第三のローマ」に位置付け、宗教的、民族的に統合されたキリスト教帝国を築こうとしていると論じた。ウクライナ正教会の独立は「プーチン氏がロシアを『第三のローマ』にする試みを効果的に食い止める」との見通しも示した。

政治専門誌ナショナル・レビュー(電子版)は18日、米国のトランプ政権やバイデン前副大統領がウクライナ正教会の独立を支持しているとし、「米国は一方に加担してきたのだから、露政府や露正教会がどのように反応するかを監視すべきだ」と主張した。(ワシントン 加納宏幸)





【感想】

プーチン大統領ロシア正教会からすれば、寝耳に水で突然、盟友だったウクライナ正教会を拉致されたような感覚である。そして、他の正教会にも独立の動きがあり、プーチン大統領とロシアの影響力を弱めようとする意図を感じる。2014年のクリミア併合では、ディープステートにそそのかされたウクライナがクリミアからロシア人を追い出したことに対抗して、プーチン大統領が介入し、住民投票によってクリミアをロシアに併合して、欧米によるロシアへの制裁が始まった。今回のウクライナ正教会独立にもクリミア併合に似た政治的気配を感じる。宗教の問題とは言え、結果として、ナショナリストプーチン大統領が痛手を受けたので、また、グローバリストの仕業だったのかもと勘繰ってしまう。




by ロード



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