北方領土で2島返還プラスアルファ

佐藤優の世界裏舞台 2島返還プラスアルファ

https://special.sankei.com/f/column/article/20181118/0001.html?_ga=2.268225098.578160406.1541871441-265623317.1434456729

北方領土交渉が動き始めた。

 〈安倍晋三首相は14日夜、ロシアのプーチン大統領と訪問先のシンガポールで会談し、今後3年以内に日露両国が平和条約を締結することで合意した。また、来年1月にも首相が訪露し、プーチン氏との会談で詰めの協議を行うことも決めた。両首脳が事実上、期限を区切って日露平和条約を結ぶことを決めたことで、戦後70年以上、解決の道筋がつけられなかった北方領土問題は大きな転換点を迎えた。首相は会談後、記者団に「戦後70年以上残されてきた課題を次の世代に先送りすることなく、私とプーチン氏の手で必ずや終止符を打つという強い意志を完全に共有した」と語った〉(15日の産経新聞)。安倍首相の力強い意気込みが伝わってくる。

 〈首相は会談後、「1956(昭和31)年の日ソ共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることで合意した」と強調した。日ソ共同宣言は平和条約締結後に、北方四島のうち、歯舞(はぼまい)群島と色丹(しこたん)島を日本に引き渡すと明記している。ただ、政府高官によると、首相は会談で「北方四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結する」という日本政府方針を改めて説明し、プーチン氏も理解を示したという〉(同)。

 対外的に政府は、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという基本的立場に変更はないと説明している。四島の帰属の問題を論理的に考えると、5通り(日4露0、日3露1、日2露2、日1露3、日0露4)の場合がある。安倍首相とプーチン大統領が「1956年の日ソ共同宣言を基礎に条約締結交渉を加速させることで合意した」ということを素直に読んでみよう。共同宣言9項後段には、〈ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする〉と記されている。歯舞群島色丹島は日本の主権下、国後(くなしり)島と択捉(えとろふ)島はロシアの主権下にあることを確認し、日露間に国境線を画定するという方向性で両首脳は今後、平和条約交渉を進めていくと思う。

 国境線が画定されることと領土問題の解決は同じ意味だ。これで日露間の戦後処理が完全に終わる。政府は北方領土がロシアによって不法占拠されているという法的解釈を変更する。歯舞群島色丹島は日本領になるのであるから、日本人が往来、居住し、経済活動や文化活動を行うことができる。国後島択捉島はロシアの主権下で、経済活動などについて日本に特別の地位を認める制度を作ることができる。特別の条約を結んでもいい。これで2島返還プラスアルファが実現する。

 国後島択捉島に日本人が進出し、島の日本化を進めることで、将来、ロシアとの合意によりこれら2島を日本領とする可能性も閉ざされていない。

 今後の交渉で重要なのは、歯舞群島色丹島の主権が日本にあることをロシアが明示的に認めることだ。日ソ共同宣言では、ソ連歯舞群島色丹島を日本に引き渡すとは書かれているが、主権に関する言及がないので、今後、ロシアが「これら2島の主権はロシアに残したまま日本に無期限貸与する」という変化球を投げてくる可能性がある。もっとも1955~56年の交渉経緯を見れば、主権の移転が前提とされていたことは明白なので、日本の立場は優位だ。

 さらにロシアは返還後の歯舞群島色丹島に米軍が展開しないことの保証を求めてくるであろう。この点に関しても、現時点でこれら2島に米軍も自衛隊も展開していないが、日本の安全保障が脅かされているわけではないので、日本は米国と協議して、プーチン大統領を安心させることができる約束をすればよい。

 いずれにせよ来年6月のG20サミット(主要20カ国首脳会議)が大阪で開かれるときまでに北方領土問題が解決される可能性が出てきた。日露提携で、中国を牽制(けんせい)することも可能になる。安倍首相にしかできない戦略的決断を筆者は強く支持する。





【感想】

北方領土ソ連が不法占拠したわけだが、一説には、アメリカが日本を共産陣営に渡さぬため、日ソ間に北方領土と言うトゲを刺したとも噂される。正攻法で四島一括返還を主張していた時代には、一歩も進展せず時間だけが経過した。ロシアからすれば、領土だけ返して経済援助してもらえない不信感があり、日本からすれば、経済援助だけして領土を返してもらえない不信感がある。歯舞群島色丹島を日本領とする2島返還と、国後島択捉島でのプラスアルファで将来に含みを持たせて合意することが現実的である。石油パイプラインの技術援助しながら、中東における石油依存度をロシアの石油に振り替えることができれば、エネルギー問題の解決にも一役買う。そうして、中国包囲網にロシアを引き込んで、中国の脅威を軽減させることができないものだろうか。




by ロード



クリックして応援してね。
にほんブログ村 哲学・思想ブログ サンクチュアリ教会へ
にほんブログ村